キキカンリスト〜危機管理の実践と研究のブログ〜

危機管理って難しい言葉だけど、日常生活でもちゃんと意識できるようになると、賢く安全に暮らせるようになると信じて、このブログに考え方や経験を書き記していこうと思います。

緊急事態宣言

今話題の緊急事態宣言。「非常事態宣言」と言ったりすることもありますが、調べてみると、どちらの言葉も同じ意味のようです。

緊急事態宣言の語源となったエマージェンシー(emergency)を「緊急事態」と訳したり、「非常事態」と訳したりしていたら、2つの言葉が別々に使われるようになった、というのが真相のようです。

f:id:hkgdbe:20210118202941j:image東京都ホームページより引用

 

このことから分かるように、日本における緊急事態宣言の歴史はあまり古くないようです。

平成15年の衆議院憲法調査会の資料を読んだのですが、主要国で最も歴史が古いのはフランスのようで、18世紀末にはすでに緊急事態法制が整備されていたとのことです。

 

そもそも緊急事態宣言は、憲法制度上の国家緊急権、つまり、憲法やルールを守るのは当然だけども、非常事態の際にそれらに縛られることで、逆に国家が危機に陥ってしまってはならないので、非常事態の際には国家が憲法などの機能を一時停止して、非常措置をとることができる権限によるものです。

では、その国家緊急権が日本国憲法に定められているかというと、条文としては見当たりません。

英米ではマーシャル・ルールというものがあり、憲法に明文化されていなくても、非常事態に国家が非常措置をとるのは当然の権限であるという考え方のようですが、日本もこの考え方に当てはめているのかどうかは、よくわかりません。

個人的には、日本国憲法にしっかり定めておくべきではないか、と思っています。

 

ちなみに、戦前は大日本帝国憲法戒厳令などの権限が定められています。

戒厳令とは、戦争や内乱の際に様々な権限を軍当局に移管するもので、要するに軍隊でないと解決できない事態には全権を軍隊に任せるというものです。

当然ですが、戦争と軍隊を放棄した日本国憲法戒厳令の規定はありません。

同じ境遇で、ドイツも戦前は憲法に国家緊急権が定められていましたが、ナチスの独裁的濫用の反省を踏まえて、戦後いったんは法律から削除され、その後に議会が関与する形の緊急事態条項が定められています。

 

難しい話になりましたが、いずれにしても、緊急事態宣言を発出する権限が与えられている以上、トップの危機管理能力と決断力に我々国民は注視し、自分自身もその意味や効果をしっかり考えて行動する必要があると思います。